運営委員紹介1.

「プロ市民」人権賞の運営委員・いのうえしんぢです。
「この賞って一体何なのさ…?」って思われてるんじゃないでしょうか。
まずは、運営委員の顔ぶれを紹介することで、その雰囲気や背景を掴んでいただけたらなぁと思います。

はじめに紹介するのは、筒井修さん。

みなさん、この方をご存知でしょうか?
パート・派遣・契約・正社員問わず、誰でも一人でも加入できる「福岡地区合同労働組合」を筒井さんは1976年に結成し、様々な労働争議を解決されてきました。2016年には40周年を迎えた合同労組は、労働運動だけではなく、福岡での市民運動(反天皇制、死刑反対、戦争反対、差別撤廃、裁判員制度反対、反弾圧救援活動、脱原発など)でも、長年ずっと下支えして来られた側面があります。

例えば、福岡市内のデモ行進の隊列には、よく合同労組の宣伝カーの姿が見られます。そのハンドルを握るばかりでなく、デモや街頭アピールに必要な道路使用申請の数々を、警察署交通課の窓口へ提出するのも筒井さん本人。その煩雑な作業のために、なんと週に半分も福岡県警に足を運ぶのです。その数々の争議や集会に対しても「自分の手柄だ」と決して自己アピールなどせず、静かに縁の下の力持ち的役回りに徹するのが筒井さんです。マニアックに過去の活動家で例えるとしましょう(笑)。

100年前のアナキストである大杉栄のように、群衆や警察に囲まれた時に大声で「大杉だ!」と声を張り上げて自己主張の強い種類の人物というのは、市民運動の中に実は結構みかける事が多いタイプではないでしょうか。それに比較して、大杉と同時代に生きた堺利彦タイプなのが、筒井さんだと分析出来ます。堺利彦とは、大逆罪に問われた幸徳事件で12人が死刑執行された後、そのひとりひとりの遺族をまわり、遺骨と香典を渡す旅を、弾圧が続く「冬の時代」の中でたった一人、地道で骨を折る大変な作業を成し遂げるような性格。そんなタイプなのです。

そんな筒井さんの実績の中に、数々の裁判闘争があります。
獄中者との外部交通権を争って、現金と切手の差し入れを可能にするという、それまでの歴史を塗り替えた「Tシャツ訴訟」
そして、脱原発デモでのサウンドカー発車を妨害し、DJ乗車を認めなかった福岡県警を訴えた「福岡サウンドデモ裁判」

どちらとも、弁護士なしの本人訴訟で、法律を独学で学び実践してきた筒井さんの存在がなければ、勝訴という大粒の果実を勝ち取る事が出来なかったでしょう。本人訴訟というダイナミックかつ型破りなスタイルで、法廷に足跡を残せたのは、法律的知識を一切知らない原告の多くの意見や質問を自由に発言させ、それを交通整理して、裁判に有利なトスをあげた彼の手腕によるものでしょう。しかし、筒井さんはこうも言われます。

「実を結ぶことを期待してやってはいません。この世の中には少数派であるがゆえに、ものを言い続けるのが必要なことが、たくさんあるんです」

決してハデではないけれど。地道な働きで市民運動を支えるヒト…そんな「プロ市民」人権賞のコンセプト自体にも、ぴったりな筒井さんを紹介しました。

(運営委員いのうえしんぢ)